ページビューの合計

2013年9月14日土曜日

バイカー的旅日記in新潟山形4

新潟に着いたときは夕方だった。

本当は旅には旅以外の目的を持ち込みたくないけれど、
どうしてもインターネットを使う必要があったので着いてすぐのインターネット・カフェに入ることにした。

用を済ませた後、今夜の寝床をついでに調べてみた。
適当に無料のキャンプ場を調べていると、粟ヶ丈自然公園というのが目についた。
僕はさっき着いたときに寄った道の駅でもらった地図を見た。
粟ヶ丈のキャンプ場というのは少なくとも地図上では山の中の、新潟にしては内陸側にあるのは明らかだった。
「ここだけは絶対に行くまい」僕は思った。
こういうときの僕の直感はたいてい正しい。
行ってはいけないと直感した場合はたいていの場合、実際行ってはいけないのだ。
危険度が限界まで高くなってから引き返したことは何度かあるし、実際危機から逃れられるか五分五分だったことさえある。
少し考えて、今夜は海岸沿いの公園にでも泊まろうと僕は思った。
この時間からの山道は避けたほうがいいと思ったからだ。

インターネットカフェを出ると僕はまっすぐ116号を上った。
このままずっとまっすぐ行けば自然と日本海側に出る。
そこで適当な海岸沿いの公園にでも寝ればいいと思った。
116号を北へ上っていくと7号につながり、それが日本海側へとつながっているはずなのだ。

僕は旅をするとき食事には全く興味が無い。
なぜかというとずっと貧乏旅行をしてきたからで、
今まであちこち回ってきたが、地方の名物に舌鼓を打ったことなんて無い。
あるのはせいぜい北海道でもらったじゃがいもくらいで、それくらい食事に金をかけないことで、
あちこち旅して回ることが出来た。というわけで、今も旅するときは食事に関しては全く関心が無い。
僕は適当にファーストフードで食事を済ませ。引き続き116号を上った。

辺りはもうすっかり暗くなり、僕の旅にはなくてはならない「不安」らしきものがたちこめてくる。
今日は寝床が見つかるだろうか、などと考えている旅行者がどれだけいるだろうか。
僕にとっては予め寝床が決定しているものは旅ですらないのだ。

ふと道案内の看板を見たとき、さっきの不安は別なものに変わった。
明らかに自分は想像とはまったく別の場所にいた。向かっているのは明らかに山の方だった。
新潟県は道がとても道が複雑な町で、116号から7号に入ったとき、反対側の7号を走ってしまったのだった。
引き返そうか考えながらやれやれと思いつつ目に入ったコンビニエンスストアに入る。
なぜか同じシリーズなのに一つだけ安いペットボトルの麦茶だけ買うと、
僕は外に出て持っている地図を見た。
それでも少しも自分の位置がわからなったので(言っていなかったが僕は方向音痴だ。)、
コンビニエンスストアにあるどちらかというと詳細な地図の本を見てみた。

信じられないことに、そこは絶対に行くまいと誓ったあのキャンプ場の道沿いで、
数kmと離れていない場所だった。
これは行くしかないと僕は思った。同時にいいようのない不安がこみ上げてくる。
旅をしていると、時々危険や試練はあらかじめ用意されていて、決まったようにそこに惹きつけられ、
決して逃れることは出来ないのだと思うことがある。
そんなわけで、まるで運命で決まっていたかのように、僕ははじめに調べた粟ヶ丈自然公園の駐車場に来た。

途中幸運な程立地がいい温泉に寄った(こんな時間に都合よく寝床の近くに温泉があることは珍しい。)が、
営業時間ぎりぎりだと断られた。
全てが悪いほうに回り始めたというわけだ。でもこのときはそんなこと頭にも浮かんでいなかった。

駐車場について、バイクのライトで案内図のある看板を見ていると、
そこは「ヒル注意」ということだった。冗談じゃないと僕は思った。
ヒルに対してはタバコの火が有効だったが僕はタバコもライターも持っていなかった。
さらにまずいことにテントを持ってキャンプ・サイトにあがろうとしたら、
懐中電灯もランタンも持ってきていないことに気づいた。
思ったとおりだった。こんな夜中に山に来るべきではなかったし、絶対に行かないと決めていたのだ。

だがしかたなく僕はバイクの明かりを頼りにその場にテントを張ることにした。

続く

0 件のコメント:

コメントを投稿